「サラ金ビル」という言葉はピンとこないかもしれませんが、新宿などの大きな駅の近くにそういったビルがあるのは心当たりがありませんか?
大手のサラ金で言うと、アイフル・アコム・プロミス・SMBCモビット・新生銀行レイクあたりが今でもよく広告で見かけます。(※レイクは新生銀行へ吸収されて、サラ金から銀行系カードローンへと変わりました)
なぜサラ金ビルはあんなにも多いのでしょうか?今回はサラ金ビルにまつわるお話をご紹介していきたいと思います。
目次
サラ金同士で1つのビルに集まるのはなぜ?
皆さんが思っている一番の疑問は「なんでサラ金は競合会社同士で1箇所に集まっているんだろう?」というような内容の疑問でしょう。
その背景には「同じとこにあったら、利用者が分散してしまって収益が減るんじゃないか?」という考えがあるはずです。
しかし、そうした無人店舗が1つのビルに集まっているのには理由が3つほどあります。
理由①とにかく目立つ
一番の理由は、サラ金ビルがとにかく目立つので記憶に残りやすいという点です。
仮にあなたがお金に困ってキャッシングを利用したい方だとしたら、まず「どこで借りたらいいだろう」と考えるでしょう。そうすると「そういえばあそこにサラ金ビルがあったなあ」と連想するはずです。ぱっと連想しやすいわけですね。
たとえどこかのビルに1社だけサラ金が入っていたとしても、サラ金ビルと比べるとなかなか印象に残りません。これがサラ金の無人店舗が1つのビルに集まりやすい一番の理由です。
理由②狭いビルには他に入居者がなかなか現れない
皆さんも想像してほしいのですが、サラ金ビルはだいたい「細長いビル」が多いとは思いませんか?
サラ金の自動契約機は1人分のスペースがあれば良いのであの狭い空間でも問題ありませんが、普通に出店すると考えるとだいぶ狭い空間です。そのため、なかなか入居者が現れないという問題があります。
あまり大きくないビルとはいえ、新宿など大きな駅前で土地代もそこそこ高い。それなのにテナントが入らないままだと赤字になってしまいます。だったらサラ金でもいいから入ってくれた方がまだマシ。
もしあなたがビルオーナーだとしたら、入ってくれるだけで助かると考えるでしょう。そのため、駅前の狭いビルにはサラ金が集まりやすい傾向があります。
理由③サラ金のイメージが悪い
世間的に見れば、「サラ金」のイメージはまだまだ悪いものです。
大手のサラ金が「消費者金融」と呼ばれるようになりそのほとんどが銀行グループへとなりましたが、そうなってからまだあまり時間は経っていません。
仮に、あなたが新しくお店を出店するオーナーだとしたら、「サラ金がすでにあるビル」と「サラ金がないビル」どちらを選ぶでしょうか?答えは聞かずともわかりますね?
やはりお店の周りのイメージというのも、集客には重大な要素となります。おそらくサラ金があるビルの家賃が安かったとしても、出店を止めるオーナーの方が多いです。それくらい大事な要素の1つなのです。
そのため、一度サラ金がテナントに入ってしまうとなかなか他のテナントが入らず、結果としてサラ金ビルになりやすいという傾向もあります。
サラ金ビルが大きな駅の近くにあるのはなぜ?
似たような疑問にはなりますが、サラ金ビルはなぜか新宿などの「大きな駅の近く」にあることが多いですよね。
単純に「人通りが多い」ということも理由の1つですが、実はそれだけじゃないんです。
サラ金の利用者は夜の仕事の人が多い
まず現時点での理由になりますが、サラ金利用者は個人事業主が多い傾向にあります。要するに、夜のお仕事をされている方々の利用が多い傾向にあります。
もちろん全体数で言うと会社員の方が多いですが、「大きな駅の近く」という場所に限定するとその数も多くなります。新宿や渋谷といった駅の近くには、それだけホストクラブやキャバクラなどのお店が多く出店されているからです。
皆さんも見たことがあると思いますが、ドラマや漫画でもよく出てくるように彼ら全員の稼ぎが良いとは限りません。そういった弱みにつけこんで「お金を借りないと」という気持ちが冷めないうちに利用させるのも、駅の近くにサラ金ビルがある理由の1つだと私は思います。
ネットで借入や返済が出来なかった頃の名残
今となってはインターネットが普及して、ほとんどのサラ金がネット上で申し込みできますが、以前はここまで普及していませんでした。
そのため、お金を借りるとなったら「自動契約機のある無人店舗」や「電話による振込キャッシング」が主流でした。
無人店舗を利用するとなると、利便性を考えて利用者の多い駅の近くにサラ金ビルができるのは当然と言えます。その頃の名残が、現在でも残っていると考えられます。
大手のおこぼれを狙うサラ金ビル
また少し昔の話になりますが、以前はもっと駅前にサラ金ビルがありました。その頃はまだ「グレーゾーン金利」など金利が高かった頃で、どんどんサラ金が規模を大きくしていました。
大きな駅の近くにサラ金ビルが広がっていった順番としては、以下のイメージです。
- 資本のある大手のサラ金が新宿などの大きな駅の近くのビルに出店する
- 大手のサラ金は返済能力の有る利用者を選ぶため審査落ちする人が一定数いる
- そのおこぼれを狙って中小のサラ金が近くのビルに出店する
- お金に困った利用者が大手よりも審査の甘い中小サラ金ビルに向かう
見ただけでサラ金に辟易する思いが湧いてきますが、経営戦略としては至極当然と言えます。そうした背景から、以前はサラ金ビルが数多く展開していました。
しかし、2006年から2010年にかけて行われた「貸金業法改正」によって、多くのサラ金が倒産することになります。
貸金業法改正によるサラ金ビルへの影響
「サラ金」に大打撃を与えた法改正
2010年に完全施行された貸金業法の法改正によって、多重債務者の温床となっていた「グレーゾーン金利」が撤廃されます。
これによって大手を含むほとんどのサラ金が経営危機に陥りました。その頃の金利差から利息の「過払い金請求」が大流行して、かなりの数の会社が倒産しました。(例:「武富士」)
残ったサラ金もそのほとんどが「銀行グループ」となり、消費者金融と名称を変えてイメージアップに努めています。
例えば、プロミス、SMBCモビットはSMBCグループの会社です。また、アコムは三菱UFJフィナンシャル・グループ、レイクとノーローンは新生銀行グループとなりました。
グレーゾーン金利とは?
そもそもグレーゾーン金利がよくわからない方のために軽くご説明をすると、キャッシングの金利を決める法律は「利息制限法」と「出資法」の2つがあり、それぞれ設定できる金利の上限にズレがありました。このズレが「グレーゾーン」というわけです。
- (2006年以前の)利息制限法:上限金利は「年20.0%」まで
- (2006年以前の)出資法:上限金利は「年29.2%」まで
改正前は出資法の上限金利が「年29.2%」となっていたため、多くのサラ金がこれに近い金利を設定していました。現在の上限金利が「18%」なので、当時は非常に高い金利設定がされていました。
そのため、借金を返済できずに複数のサラ金からお金を借りる「多重債務者」が続出。当時はまだ細かい法律が定まっていなかったこともあり、過剰な返済の催促や取り立てが横行したというわけです。
サラ金の悪いイメージは、だいたいここで出来ているといっても過言ではありません。(とはいえ、やはりキャッシングに計画性がなかった利用者側も悪いのは事実です)
倒産に伴い多くのサラ金ビルがもぬけの殻に
会社の倒産にともない、サラ金ビルもその多くが減っていきました。
残った店舗も、銀行グループとなった「大手サラ金」とそれ以外の「中小サラ金」で信用度に格差が広がり、どんどんサラ金ビルは減っています。
サラ金ビルの減少は留まるところを知らない
さらにはインターネットとパソコン・スマートフォンの普及により、借入や返済といった取引がオンライン化。現在では「Web完結申し込み」が当たり前になりつつあるため、大手の無人店舗もその数を減らしています。
例えばプロミスは、現在「自動契約コーナー」を全国に約1,000か所設置していますが、1年前から約100台も減っています。
このペースで行けば、10年後にはサラ金ビルのほとんどがなくなることになりますね。
まとめ
まとめると以下の通りです。
- サラ金ビルはとにかく目立つ。1箇所に集まることで記憶に残りやすい
- 細長いビルには入居者がなかなか現れないため、サラ金が入りやすい
- サラ金が1つ入ると、印象が良くないため他の店舗がなかなか入らない
- サラ金の利用者には個人事業主が多く、大きな駅の近くは需要が高い
いかがでしたでしょうか。こういった理由からどんどんその数を減らすサラ金ビルですが、法改正以外でも「街の景観を悪くする」といった理由からサラ金ビルは減少する一途を辿っています。
今では見飽きるほど大きな駅の周りにあるサラ金ビル。しかし数年後には、もはやどこでも見られないレアな「建造物」として有名になっているかもしれません。
どちらにせよ、キャッシングは計画性をもって利用してほしいと、私は強く願います。