サラ金への過払い金請求で利息の半分以上が返ってくる

皆さんもちょっと前まで、「過払い金」のCMをよくテレビで見かけてはいませんでしたか?5年ほど前に多かったと思います。

これにはわけがあって、2010年にキャッシング関係で大きな法改正がありました。これによって金利の上限が変わったんです。

そしてその後の判決で、金利が変わる前と後の利息の差分を返還できることが決まりました。これが「過払い金」の始まりです。

目次

サラ金の金利が変わり過払い金ができた経緯

過払い金の説明をするには、以下のものがポイントになります。

  • グレーゾーン金利
  • 出資法と利息制限法
  • 2010年の改正貸金業法の完全施行

多重債務の温床!「グレーゾーン金利」

単刀直入に言うと、グレーゾーン金利というのはキャッシングに適用できる2つの金利の差のことです。

2017年現在では「金利の上限は20.0%まで」と定められていますが、当時は「29.2%まで」でした。これは、「出資法」と「利息制限法」の上限金利に差があったからです。

利息制限法では、借入額に応じて上限金利は15~20%までとなっていました。しかし出資法では、借入額に関係なく上限金利が29.2%まで適用できることになっていたのです。

試しに当時と現在の返済額を計算してみた

言葉では伝わりづらいと思いますので、お金でご説明しようと思います。

仮に「借入額30万円、毎月の返済額1万5千円」という条件で当時と現在の金利を計算してみると、結果は下記の通りになりました。(参考:プロミス「返済シミュレーション」)

☆金利が年29.2%の場合

  • 返済期間:28か月
  • 累計返済額:416,055円
  • 合計利息:116,055円
☆金利が年18.0%の場合

  • 返済期間:24か月
  • 累計返済額:359,332円
  • 合計利息:59,332円

ご覧いただければわかる通り、結果として「返済期間4ヶ月、合計利息56,723円」の差ができました。利息に至ってはほぼ2倍の差ができてしまいましたね。

グレーゾーン金利の頃は、利息だけで元金の3分の1や半分以上取られていたというわけです。当時は個人が借りられる金額に明確な制限もなかったため、借入額がさらに多くなっていたらと思うと…。

これでは借金に借金を重ねてしまう「多重債務者」が続出してしまうのも無理はありません。悪徳業者も続出して「サラ金」が社会問題にもなり、早急な改善が必要となりました。そこで貸金業法の改正が進められます。

貸金業法の改正

2006年から始まり2010年に完全施行された貸金業法の改正は、2つの大きな変更点があります。

  • グレーゾーン金利の撤廃:キャッシングに適用できる金利の上限を20.0%までに統一
  • 総量規制の導入:個人がキャッシングできる金額を年収の3分の1までに制限
グレーゾーン金利の撤廃

グレーゾーン金利というものがなくなったというよりも、先ほど出てきた出資法の上限金利を「年20.0%」に引き下げたという方が正しいですね。

これによって、以前のように高利貸しをしていたサラ金は刑事罰の対象となって経営ができなくなります。事実上の強制引き下げというわけですね。

また、以下の利息制限法をこえる金利が設定されている場合は行政処分となり、その超過分の利息は無効となります。

  • 借入額が10万円未満の場合、金利の上限は年20.0%まで
  • 借入額が10万円以上100万円未満の場合、金利の上限は年18.0%まで
  • 借入額が100万円以上の場合、金利の上限は年15.0%まで
総量規制の導入
「総量規制」
個人がキャッシングで融資を受ける場合、自身の年収の3分の1をこえる借入を制限する。

これまでは、個人が借りられる金額に明確な制限というものがありませんでした。しかし多重債務者が社会問題となったことで、個人が借りられる金額にも上限が定められました。

例えば、年収300万円の利用者は合計で100万円未満までしか借入することができません。これは1社からの借入だけでなく、借入全体の合計額が3分の1までとなります。

つまりサラ金A社から「30万円」、B社から「50万円」と借りている場合、新たにC社から借りるときは20万円以上借りることができません。

ただし、総量規制をこえて借入をした場合の罰則については、利用者ではなく貸金業者側が罰せられます。超過分の利息や返済は無効となるケースが一般的です。

過払い金請求をするためには?

結論から言うと、「弁護士事務所へ相談」をすることが一番の解決策になります。

過払い金返還請求手続きは個人でも行うことができるのですが、そのためには一通り法律や書類作成の知識を身につけなければいけません。

その手間を考えると、弁護士へ相談する方が圧倒的に時間のコストが低いです。また基本的に「成果報酬」なので、相談する時点では「無料」です。どんどん活用しましょう。

ただ、過払い金請求は必ずできるというわけではありません。それには下記の要因が考えられます。

過払い金が請求できなくなる主な2つの要因

①利用していたサラ金の倒産

法改正後、当時の利用者からの多数の過払い金請求により、経営が困難になるサラ金が続出します。

また、貸金業法に「総量規制」が導入されたことにより、個人が借入可能な金額が「年収の3分の1まで」になったのはご説明しましたね。これもまた、サラ金の経営難に拍車をかけることになります。

「過払い金」という莫大な負債を返還することができなくなり、倒産するサラ金が相次いででてきました。例えば以下の2社が挙げられます。

武富士

当時にしては過激な衣装でグループがダンスをしていたCMが記憶に残っている方も多いのではないでしょうか?また、当時の武井保雄会長の語録が有名でした。

  • 3倍遊ぶために3倍働け
  • 右翼は暴力団に弱い。暴力団は警察に弱い。警察は右翼に弱い。この三つをうまく使って物事を収めろ

そんな武富士ですが、改正貸金業法が完全施行された2010年の9月に倒産します。請求された過払い金を含めた総負債額はなんと「4,336億円」もあり、当然ながら過払い金の返済も十分になされませんでした。

その後2011年にはすでに過払い金の受付が終了してしまい、現在では武富士に対して過払い金請求をすることはできません。

栄光

武富士ほどの知名度はありませんが、横浜を拠点に35年以上の歴史あるサラ金でした。しかし2016年8月に倒産。

その負債額は205億円。過払い金請求の負債だけで175億円まで膨らんでしまったため、自己破産申請を出しています。

過払い金の返還に関しては非常に苦しい状況のようで、公式ホームページではQ&Aで下記のように答えています。

  • 現時点では資産が乏しく、一般破産債権への配当は見込めない状況
  • 現時点では配当ができるだけの原資がなく、債権届出もいただかないこと、正確な取引履歴を作成するためにも新たなシステム開発が必要であるところ、当該費用を賄うだけの十分な原資がないこと等から、個別の取引履歴の開示は行いません。

上記の通り、過払い金の返還がいつになっていくら回収できるのかわかるのは、まだ当分先になりそうです。

②過払い金請求の時効

最後の取引から10年以上経過してしまうと、実はそれ以前に利用していたキャッシングの過払い金を請求する権利がなくなってしまいます。

現在は2017年なので、遡って2006年までに完済してそれ以降は取引がないキャッシングは、過払い金請求ができません。

逆に言えば、2007年~2010年にキャッシングの借入や返済を行っていた方は、今しかチャンスがありません。思い当たる節がある方は、急いで弁護士や司法書士に相談できるよう検索してみてください。

まとめ

まとめると以下の通りです。

  • 過払い金とは、「改正前の年29.2%の金利」に「改正後の年15.0~20.0%の金利」差し引いた利息の差分
  • 貸金業法の改正によって、グレーゾーン金利の撤廃と総量規制の導入が行われた
  • 過払い金返還請求は、利用していたサラ金が倒産していたり最後の取引から10年以上経っているとできない

要するに、過払い金請求は2010年以前にキャッシングを利用していた方が、払い過ぎた金利を返してもらうためのものです。

2010年以降にキャッシングを利用し始めた方にとっては、あまり関係がありません。時間の無駄でむしろデメリットになってしまいますね。

ただ当時と現在の金利を計算した例があるように、10%程度の金利の差でも合計利息は大きく変わってきます。その利息の差額は、簡単に10万円を超えるわけです。

「もう完済したことだし過払い金はどうでもいいや」と思わずに、払い過ぎた分があれば急いで弁護士に相談することを私は強くおすすめします。